8月5日「裏と表とコーヒーフロート」劇団ハーベスト〜コーヒーチーム〜@ステージカフェ下北沢亭




☆現場へ


今日は下北沢亭というところで劇団ハーベストを初めて見に来ました。

小田急下北沢駅南口からずーっと道なりに下っていくと花屋があり右へ曲がるとすぐ「ステージカフェ 下北沢亭」の看板が目に入ってきた。


予想より小さい箱だなぁ〜

ドリンクチケット交換したラムコークを飲みながら着席。

ほどなく入口から物販売に異常に美しい少女が来た。くぼさゆ(久保田沙友)だ。

凸出しポニーテールでラストサムライ渡辺謙ばりの迫力ある。

静かな微笑み凛とした雰囲気。でも子供みたいに小さい。


初見なのでグッズは観劇後のテンションで決めますね。


☆開演



さっきから気になってるけど、ステージ上にまだ女の子のお客さん残ってませんか。


特に上手に座って漫画読んでるヲタっぽい子なんて自然過ぎて本当に客かと思って、

「常連さんかな開演時間にはそこどいてくれるのかなぁ」なんて一瞬思っちゃった。


ほどなくおもしろ観劇前の諸注意がはじまったので、いくら鈍感な私でも気付きましたよ〜。

下北沢亭に足を踏み入れた時からもう「演劇の世界にいる」ってすごいな。

ヲタク少女は野々村りみ役の加藤梨里香さん、

下手の劇団員っぽい(合ってる)のは舘岡潤役の松永ミチルさん。


松永さんが何か独り言いうたび、ビクつく梨里香さん。

松永さんを直接見れないけど心配、みたいな中途半端な顔の向け方しててリアルだった。


おもしろ諸注意は「はとバスver」だったかな。

でもまだ、客入ってくるし、客電落ちないしこのカオスが面白い。

芝居ってこういう自由度があって好き。


松永さんいかにも下北に居そうな、アルバイト店員になりきってて安心して物語に没入させていただいた。

布施さんも同様、ユニークな喫茶店員役がぴったりはまってて驚く。


家帰ってパンフ見たら「あれ?布施さん美人じゃん!」って失礼な感想が生まれてしまった。

これは普段美人である布施さんが役づくりであのコミカルな「先輩」になりきっていたということですね。


ところで、劇中に登場する「ポップハート」のイラストをミチルさんが描いますが、納得、納得〜っと。

ミチルさんの全身から個性が匂う。下がり眉毛が可愛い!

「先輩!」「せんぱーい!」「せ・ん・ぱ・い」など、バリエーション豊かな呼びかけに毎回笑ってた。


また、ポップハートの魅力をいきなりオーバーアクションぎみに語りだした梨里香さんも面白かった。

ヲタク特有の早口言葉、チューニング間違ったような声、

空を切り裂くような切れ味あるジェスチャーが妙にリアル。


さらに、伊集院さくら役の鈴木悠巴さんが、とにかくキュートで僕のハートがビート打ちまくってた。

「インターネットもテレビも制限されていたお嬢様が、大学入ってみて自分がいかに世間知らずか気付いてしまった」

というシチュエーションはベタだが最高。

ベタが最高という事例


男はうぶな女にいろいろ教えたい生命体だからね。学校でもよく英語とか教えていたな〜

悠巴さんには生まれながらのうぶオーラがありますね。



悠巴「コーヒーフラペチーノ。トールサイズで」

ミチル「え?」

悠巴「だーかーらー、コーヒーフラペチーノ。トールサイズで」

萌花「…お嬢様それはスターバックスコーヒー限定商品では!?」

悠巴「え?そうなんですか?藤堂わたくし恥ずかしい!」

萌花「恥ずかしいですねお嬢様!!」



人生初の喫茶店オーダーで、身体をくねらせながら恥ずかしがる悠巴さんが震えるほど可愛い!

萌花さんの「恥ずかしいですねお嬢様!」も鬼気迫るものがあり、感動した。どんな感動だ!


萌花さんの低い声が素敵。特命秘書という大人役なので、意識していたのかもしれませんが、

すらっと背の高い萌花さん非常にお似合い。


さて、鈴木悠巴さんの話を続けたい。


☆「お客様!それはご注文ではございません!」


悠巴「わっ!わっ!わっ!わっ!わっ!」

萌花「大丈夫ですか?」

悠巴「大丈夫よ。わたくしをここで働かせてください!」


最初のうち悠巴さんの「わっ!」が高音過ぎて聞き取れなかったんですよ。

なかなか子音が聞き取れないから「あっ!」だと最初思った。

こっちもすごくハラハラして好きなシーンです。お嬢様も大きい声出るのね。


「もう自立なんでしないでいいから〜、お兄さんの言う通りお見合いしちゃいな〜」

と思った。


もう一度言いますが、「お嬢様が大学で自分の世間知らずを知り、自立を目指すすったもんだコメディー」ってのはありがちです。

でも、この劇は目の前で、至近距離であのキュートな悠巴さんのお嬢様演技が堪能できるんです。

それだけで価値がある。


声がとにかく可愛い。俺には一生手に入らないものだ。努力も糞もない。


悠巴さんの声が欲しい。一時間でいいからあの声で叫んでみたい!

声を冷凍して少しずつ解凍して味わいたい。


勝手なことを言ってますが、生で演劇って声が生だから本当に楽しいです。

今そこにある可愛い声。それを聞いてるだけでワクワクします。


悠巴さん、お嬢様役がはまり役過ぎて、今後違う役やったときの違和感半端ない!

もうずっとお嬢様でいて!


でもご本人はどんどん新たな役柄に挑戦していってほしい。



☆今回の名コンビって言ったら〜?



松永ミチルさん(舘岡潤役)と布施日花梨さん(金山海咲役)でしょう!

実はコーヒーチームで一番印象に残ったのはこのお二人の演技。

舘岡潤はしっかりもので、金山海咲は感覚的に生きる人間。


日花梨さん用事から戻ってくる。アイスディッシャーを買ってきたようだ。


ミチル「あ、おつり」

日花梨「…え?」
ミチル「店長1000円渡したって言ってましたよ」

日花梨「何のこと?」

ミチル「とぼけないでください。」



話を反らせようとするがミチルは最後まで「おつり」の一点張り。かなり冷静な女。



ミチル「先輩じゃんけんしましょう。じゃんけん、ぽん!」

ジャリーン!日花梨の手にあった小銭が床に落ちた。

ミチル「先輩いっつもじゃんけんでパー出すんだから〜」



非常に小気味いい演技でふふふって笑った。息ぴったりのお二人ですね。

ミチルは実はちゃらんぽらんな日花梨のことを誰より心配でいる。

もし、先輩である日花梨から誘われたら、日花梨の旗揚げする劇団の会計もやるし、なんなら台本も密かに用意してます。

こういう背景を踏まえてこれらを見てるとグッときた。

人って色んな想いで日常を過ごしてますね。外からは見えにくい。


純真無垢のお嬢様の自立のお手伝いをしたり、すったもんだの末、いつの間にか現れてきたもの。

登場人物のみんなの表層(世間体)と真相(本心)というべきもの。


海咲の妹風香(青山美郷)の本心、ミチルの本心、

伊集院さくらの本心、伊集院一男の本心、特命秘書山本さんの本心…。


なんとなく仲良くしておかないと会社でうまく仕事が任せられないとか大人は普段無難な人付き合いで仲良いフリしてるときがある。

それを社会性とか、コミュニケーション能力とか言ってるかもしれない。


だけど、摩擦によって壊れないくらいの友情とか家族の愛情ってあるよ。そういうのいいよね。

摩擦することでお互いが秘めていた真相が噴出し、いったんは絆がふらふらになりかけるけど、

たいていは元よりずっと固いロープが出来上がる。


最近、会社の人間関係に不審感を覚えて、ドロドロになってしまった僕の心に透明な氷を落としてくれた物語でした。


長文になってしまいましたが、読んでいただいてうれしいです。


はいっ!それじゃ次はフロートチームへ!!








6月5日リリウム 少女純潔歌劇@サンシャイン劇場




見終わったら泥のような絶望感。

この劇は救いがない終わり方をしました。

けれど大好きだ。こういう劇。


物語の登場人物はみな悲劇のヒロインだけどとりわけ不幸な子が二人いる。


シルベチカ?いやいや。彼女は最後に自らの意思で生きる権利を取り戻たじゃないか。

その直後塔から飛び降りて幻想から解放され美しい魂になった。


スノウ?違う。スノウはファルスに一番愛されてたし最後は死ねた。

死ねたというのが永遠の苦悩からの脱出つまり安らかな眠りになったのだ。

死が不幸とだれが決めた。リリウムを見ろ


マリーゴールド?いやいや。愛する人がいる。

そしてそのひとに思いを告げて死ねたんだ。俺からしたら幸せだよ。


クランの謎と自らの運命を知ったうえで講義をする紫蘭と竜胆にこそこの物語の一番の狂気と悲劇を見る。

ファルスへの憧れか同情。それとも自らの美貌が永遠に保たれることへの執着心か。


紫蘭はファルスに憧れ尊敬していた風もある。

それに対して、竜胆は美の永遠に対する執着心からすべてを受け入れているように見える。


でも2人は知っている。不老が不死にはならないことを。


シルベチカは自殺した。

この狂気の園に絶望し、せめて最後は自らの意思で。それを見た2人は何を感じた。

不老と引きかえにいつ訪れるとも知れない死を意識し続ける人生。震えたでしょう。


何も知らないほうが幸せだな。知ってるってことは恐ろしいこと。


だがエンディングで全ての悲劇がリリーただ1人にのしかかる。

リリー可哀想だよ。俺なら殺してくれ!頼む!生かさないで!と叫びたいよ。

繰り返される自殺発狂、リリーの永久の苦しみのはじまりで幕が下りる。




いやー、ハロの現場とは思えないこの観劇後の重い雰囲気。

鬱に鬱を重ねるような気分になりまして食欲も減退しましたが、

不思議と翌日にはこの物語の面白さを誰かに伝えたくて仕方なくなりました。


帰りにサントラを買ったんだけど大正解。毎晩聞いてます。

最後にその中から「永遠の繭期のおわり」の好きな歌詞を置いておきます。


「夢のなかで夢を見てはいけない 現実にこそ夢の花は咲く」

5つ数えれば君の夢3月15日@シネマライズ その2



一週間たって思い出したことを書きます。

トイレでの委員長(中江)と新井さんの会話シーン。


新井「寝ているときも目をつぶってるときもいつも音楽が頭の中に流れてて、

踊らずにはいられないの。」

新井「だんだん内面の世界と外面との境界線が曖昧になってくるの」

委員長「それって気が狂うってことだよ」

休み時間でも自分の机で目を閉じながら笑顔でバレエのステップを踏む新井。

周囲は奇異の目で嘲笑し、また畏怖している。


確実に心が壊れていそうだ。それに自閉症気味に描かれてる。

もう本当に心が痛むのです。


しかし、上記の会話シーンでそれを指摘した「気が狂う」委員長もまた気が狂っているのである。

実の兄との実るはずもない結合、愛を永遠に求め続ける生き方もまた狂気。


学園祭の委員長として他の委員からも、

おそらく同級生全員からしっかりものとして見られているこの子。


学園祭の準備で夜遅くなったときお弁当を届けてくれた兄に愛の告白をし、

学園祭のあとに体育館の片隅で兄に愛の告白。たぶん昔から二度や三度じゃない。


新井さんに「気が狂ってる」と言ったのではなく自分に「気が狂ってる」と言ったんじゃないか。

なめくじみたいなおぞましい愛情が世間の常識という塩をふりかけられグズグズと溶け出している。


「これから今日しかしない話をするね」と低いトーンで実兄に告白するシーンは、

俺の心臓をじかにナイフで切り裂いていった。


委員長中江は周囲から好かれていそうで「委員長」と役職名でしか呼ばれない壁を作られてる。

その点で孤高の美少女新井さんと同じ生き物として存在していました。


周囲とうまくやっている中江さんと、周囲は気にしない新井さん。

でも同じ孤独と狂気に生きてる。


トイレでのシーンは狂気だと気付いてる人が狂気そのものの存在に語りかける悲しい場面。

内面が溶け出してしまってもう何がなんだかわからなくなってしまうことは俺もあるかな。



さて、音楽が頭の中で流れ続ける少女。

ミスコンの新井さんのダンスシーンはまたこれも最高の孤高のシーンでした。

小西さんがピアノを演奏することを拒否すると無音で踊りだす新井さん。


このとき一体どんな音楽が頭に流れていたのだろう。

クラシックバレエのような現代舞踏のようなダンスで踊り狂う新井さん。


ステージを降り、踊り続ける新井さんを見て生徒たちは悲鳴をあげて逃げる。

山邊さんが体育館の二階から新井さんの行く経路を花を降らして演出してる。

これは綺麗で悲しいシーン。悲しいのに綺麗なシーン大好き。


これは絵ですよ。動く絵画です。はぁ…


小西さんに抗議することもなく、生徒たちを気にすることもなく踊る新井さんは、

すでに社会との断絶を決意してしまっていてつらいな。


ミスコン後、留学していったと語られるが、もはやこの世界にはいないと思ってしまった。

新井さんは天使?悪魔?神?永遠に届かない存在になって消えていった。


けど、ほんの少しの間、新井さんと心を通わせた山邊はミスコン後明らかに強くたくましい女の子になっていた。

ここが救いです。

同じ映画は繰り返し見ないけど、また見たいと思った。

この映画はセリフ全部が美しくてよかった。

言葉がいい映画は素敵。みなさん見に行ってほしいです。