5つ数えれば君の夢3月15日@シネマライズ その2



一週間たって思い出したことを書きます。

トイレでの委員長(中江)と新井さんの会話シーン。


新井「寝ているときも目をつぶってるときもいつも音楽が頭の中に流れてて、

踊らずにはいられないの。」

新井「だんだん内面の世界と外面との境界線が曖昧になってくるの」

委員長「それって気が狂うってことだよ」

休み時間でも自分の机で目を閉じながら笑顔でバレエのステップを踏む新井。

周囲は奇異の目で嘲笑し、また畏怖している。


確実に心が壊れていそうだ。それに自閉症気味に描かれてる。

もう本当に心が痛むのです。


しかし、上記の会話シーンでそれを指摘した「気が狂う」委員長もまた気が狂っているのである。

実の兄との実るはずもない結合、愛を永遠に求め続ける生き方もまた狂気。


学園祭の委員長として他の委員からも、

おそらく同級生全員からしっかりものとして見られているこの子。


学園祭の準備で夜遅くなったときお弁当を届けてくれた兄に愛の告白をし、

学園祭のあとに体育館の片隅で兄に愛の告白。たぶん昔から二度や三度じゃない。


新井さんに「気が狂ってる」と言ったのではなく自分に「気が狂ってる」と言ったんじゃないか。

なめくじみたいなおぞましい愛情が世間の常識という塩をふりかけられグズグズと溶け出している。


「これから今日しかしない話をするね」と低いトーンで実兄に告白するシーンは、

俺の心臓をじかにナイフで切り裂いていった。


委員長中江は周囲から好かれていそうで「委員長」と役職名でしか呼ばれない壁を作られてる。

その点で孤高の美少女新井さんと同じ生き物として存在していました。


周囲とうまくやっている中江さんと、周囲は気にしない新井さん。

でも同じ孤独と狂気に生きてる。


トイレでのシーンは狂気だと気付いてる人が狂気そのものの存在に語りかける悲しい場面。

内面が溶け出してしまってもう何がなんだかわからなくなってしまうことは俺もあるかな。



さて、音楽が頭の中で流れ続ける少女。

ミスコンの新井さんのダンスシーンはまたこれも最高の孤高のシーンでした。

小西さんがピアノを演奏することを拒否すると無音で踊りだす新井さん。


このとき一体どんな音楽が頭に流れていたのだろう。

クラシックバレエのような現代舞踏のようなダンスで踊り狂う新井さん。


ステージを降り、踊り続ける新井さんを見て生徒たちは悲鳴をあげて逃げる。

山邊さんが体育館の二階から新井さんの行く経路を花を降らして演出してる。

これは綺麗で悲しいシーン。悲しいのに綺麗なシーン大好き。


これは絵ですよ。動く絵画です。はぁ…


小西さんに抗議することもなく、生徒たちを気にすることもなく踊る新井さんは、

すでに社会との断絶を決意してしまっていてつらいな。


ミスコン後、留学していったと語られるが、もはやこの世界にはいないと思ってしまった。

新井さんは天使?悪魔?神?永遠に届かない存在になって消えていった。


けど、ほんの少しの間、新井さんと心を通わせた山邊はミスコン後明らかに強くたくましい女の子になっていた。

ここが救いです。

同じ映画は繰り返し見ないけど、また見たいと思った。

この映画はセリフ全部が美しくてよかった。

言葉がいい映画は素敵。みなさん見に行ってほしいです。